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漢詩かるた

佐賀県漢詩連盟刊行

漢詩かるた・詳細

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漢詩かるた意訳(全) 絶句・全45首(1~35:中国漢詩 36~45:佐賀多久の漢詩)

 

    ※下記の漢詩人(作者)名をクリックすると、その漢詩にページが移ります。

    ※漢詩人(作者)の略歴はこちら⇒漢詩かるた・漢詩人(作者)略歴

       
    ※作者の前にある数字は「漢詩かるたのご案内」裏面の「漢詩かるた45首一覧」     の数字と対応していますので、併せてご参照ください。


1:盧僎 2:孟浩然 3:王之渙 4~6:王維 7~12:李白
13~14:杜甫 15:韋応物 16:王建 17:柳宗元 18:劉禹錫
19:賈島 20:于武陵 21:李清照 22:袁凱 23:王翰
24:王昌齢 25~26:高適 27:岑参 28:張継 29:李益
30:白居易 31:杜牧 32:李商隠 33:王安石 34:蘇軾
35:朱熹        
36:智雲法師 37:石井鶴山 38:草場佩川 39:西鼓岳 40:草場船山
41:袋久平 42:高取西渓 43:志田林三郎 44~45:石川忠久  
         
         



1:南楼の望(なんろうのぼう)             盧僎(ろせん)

 国を去って三巴遠く   楼に登れば万里春なり   

 傷心す 江上の客    是れ故郷の人ならず

 

意訳 
都に別れを告げ、遠く三巴の地まで流されて来た。
町の南楼に登りながめやれば、見わたすかぎりの春景色。
だが、長江のほとりにたたずむ私の心は痛むのだ。
私は、この春景色を楽しむにふさわしい、この土地の者ではないのだから。

 

2:春暁(しゅんぎょう)               孟浩然(もうこうねん)

 春眠 暁を覚えず   処処 啼鳥を聞く   

 夜来 風雨の声    花落つること 知る多少

意訳
春の眠りは心地よく、うつらうつらと夜の明けたのも気づかずに寝ている。
外ではあちらこちらでもいかにも春が来ましたとばかりピイチクとなく小鳥の声が聞こえてくる。
そういえば、ゆうべは風雨の音がしていたが、
花はいったいどれほど散ったことやら。

 

3:鸛鵲楼に登る(かんじゃくろうにのぼる)      王之渙(おうしかん)

 

 白日山に依りて尽き    黄河海に入って流る   

 千里の目を窮めんと欲し  更に上る 一層の楼

 

意訳

この鸛鵲楼からながめると、いましも真っ赤に輝く太陽が、黒々とした山脈に沿いながら沈んでゆき、
眼下にはとうとうたる黄河が北から流れて来て、ここを屈曲点にしてグーッと東の方へまるで海に流れ込こまんばかりの勢いで流れてゆく。
この雄大な眺望をさらに遠く千里の向こうまでも窮めようと、
もう一階上に上った。

 

4:竹里館(ちくりかん)               王維(おうい)

 

 独り坐す 幽篁の裏   琴を弾じて復た長嘯す   

 深林人知らず      明月来って相照らす


意訳
ただ独り奥深い竹の林の中に座っている。
その竹の林の中で琴を弾じたり、長嘯したりしている。
深い林の中であるからだれもこの楽しみを知らない。
やがて日が暮れて、そこへ月がさし上る。

 

5:元二の安西に使いするを送る(げんじのあんせいにつかいするをおくる)  王維(おうい)

 

 渭城の朝雨 軽塵を浥おす        客舎青青柳色新なり

 君に勧む 更に尽くせ一杯の酒      西のかた陽関を出づれば故人無からん

 

意訳

別れの朝、渭城の町に夜来の雨が上がって、軽い土ぼこりをしっとりとうるおしている。
宿屋の前には青々とした柳の芽が芽吹いたばかり、それが塵を洗い落とし、水を含んでよりいっそう青々と見える。
いよいよ旅立つ元二君、どうぞ一杯酒を飲みたまえ。
西の方、陽関という関所を出たならば、もう一緒に酒をくみかわす友達もいないだろう。

 

6:九月九日山中の兄弟を憶う(くがつここのかさんちゅうのけいていをおもう) 
                                   王維(おうい
)

 独り異郷に在って異客となる     佳節に逢うごとに倍す親を思う
 遙かに知る 兄弟高きに登る処    遍く茱萸を挿して一人を少くを


意訳

自分ひとりが故郷を離れ、よその国で旅人となっている。
めでたいお節句に出会うたびに、いよいよ故郷の親兄弟を懐かしく思うのである。
兄弟たちが高いところに登ってその折に
皆そろって茱萸を挿している中に、自分一人が欠けている情景を、はるかに想像する。


 

7:静夜思(せいやし)              李白(りはく)

 

 牀前月光を看る       疑うらくは是れ地上の霜かと  

 頭を挙げて山月を望み    頭を低れて故郷を思う

 

意訳

秋の静かな夜、寝台の前に月の光が白くさしこむのを見て、
地上に降った霜かと疑うほどであった。だがよくよく見ると、霜ではなかった。
そこで、光をたどって頭をあげてみると、山の端に月がかかっている。その月をながめているうちに、
故郷のことが思いおこされ、頭は知らず知らずうなだれて、私はいつかしみじみと望郷の念にひたっている。

 

 

8:峨眉山月の歌(がびさんげつのうた)       李白(りはく)

 

 峨眉山月 半輪の秋     影は平羌江水に入って流る
 夜清渓を発して三峡に向う  君を思えども見えず 渝州に下る

 

意訳

峨眉山上に半輪の秋の月がかかり、
その月の光が平羌江の水の上に映って、ちらちらと流れていくように見える。
私は夜中に清渓を舟出して三峡に向かっていく。
やがて山がせまり、岸がそびえるにつれて、月はいつしかかくれ、あの月を見たいと思ったが、ついに見ることができず、渝州に下っていく。

 

 

9:早に白帝城を発す(つとにはくていじょうをはっす)   李白(りはく)

 

 朝に辞す 白帝彩雲の間    千里の江陵一日にして還る
 両岸の猿声啼いて住まざるに  軽舟已に過ぐ 万重の山

 

意訳

朝早く朝焼け雲たなびく白帝城に別れをつげて、
山峡を下ると、千里もの距離がある江陵に、たった一日でついてしまう。
切りたつ両岸では、群れをなす猿のなき声が絶え間なく続いている。そのなき声が続いているうちに、
私の乗った軽い舟は、いくえにも重なった山の間を通り抜けてゆく。

 

 

10:客中の作(かくちゅうのさく)             李白(りはく)

 

 蘭陵の美酒 鬱金香          玉椀盛り来る琥珀の光

 但だ主人をして能く客を酔わしむれば  知らず 何れの処か是れ他郷

意訳

蘭陵の美酒は、鬱金香のような秀香を放っており、
美しい杯に盛れば、琥珀の色に光りかがやく。
ただこの宿のあるじが、旅人の私を十分に酔わせてくれさえすれば、
いったいどこが、他国なのであろうか、故郷にいるのと少しも変わらない。

 

11:黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る(こうかくろうにて、もうこうねんのこうりょう  にゆくをおくる)     李白(りはく)

 

 故人西のかた黄鶴楼を辞し       烟花三月揚州に下る
 孤帆の遠影碧空に尽き         唯見る 長江の天際に流るるを
 
意訳
わが親友、孟浩然君は、この黄鶴楼に別れを告げて、
春、花がすみの三月に、揚州へ舟で下ってゆく。
楼上からながめると、たった一つの帆かけ舟のかすかな姿が、青い空に吸い込まれて消え、
あとにはただ長江の流れが天の果てへと流れてゆくばかりである。


 

12:山中問答(さんちゅうもんどう)            李白(りはく)

 余に問う 何の意あってか碧山に棲むと 笑って答えず 心自から閑なり
 桃花流水窅然として去る        別に天地の人間に非ざる有り

意訳

ある人が、私に、どんな考えで緑の山の中などにとじこもるのかとたずねても、
笑って答えず、私の心は落ちついて、のどかである。
桃の花びらが水に散って、はるかに流れ去っていくが、
ここには俗世間と違う別の世界がある。


 
13:絶句(ぜっく)                     杜甫(とほ)

 

 江碧にして鳥逾白く  山青くして花然えんと欲す 
 今春看又過ぐ     何れの日か是れ帰年ならん

意訳

錦江の水は深いみどり色に澄み、そこに遊ぶ水鳥はますます白くみえる。
山の木は緑に映え、花は燃え出さんばかりに真っ赤である。
今年の春もみるみるうちに過ぎ去ってしまおうとしている。
いったい、いつになったら故郷に帰れるときが、やってくるのであろうか。


 

14:復愁う(またうれう)                  杜甫(とほ)

 万国尚戎馬         故園今若何   

 昔帰りしとき相識少なり   蚤く已に戦場多し

意訳

どこの国でも今なお戦争が続いている。
故郷はいまどうなっているだろうか。
昔帰った時でさえも、皆徴兵されて知り合いの人はまれであった。
その時からもう戦場が多くなっていたのだ。

 

15:秋夜丘二十二員外に寄す(しゅうやきゅうにじゅうにいんがいによす) 
                             韋応物(いおうぶつ)

 君を懐うは秋夜に属し 散歩して涼天に詠ず 

 山空しくして松子落つ 幽人応に未だ眠らざるべし

意訳

あなたのことを思っている今は、ちょうど秋の夜である。
そぞろ歩きをしながら涼しく広がる天に向かって詩を吟じている。
山の中には人気もなくて、松かさがカサリと落ちた。
ひっそりと住むあなたも、きっとまだ眠っていないだろう。


 

16:新嫁の娘(しんかのじょう)              王建(おうけん)


 三日厨下に入り      手を洗いて羮湯を作る  

 未だ姑の食性を諳んぜず  先ず小姑をして嘗めしむ

意訳

嫁いで三日目、いよいよ台所に入りかいがいしく新妻のしごとはじめ。
気を引き締め手を洗いきよめ、羹湯づくりにとりかかる。
まだ、お姑さまの好みを知らないので
まず小姑に味みをしてもらう。

 
17:江雪(こうせつ)                   柳宗元(りゅうそうげん)

 千山鳥飛ぶこと絶え   万径人蹤滅す   

 孤舟簑笠の翁      独り釣る 寒江の雪

意訳

どの山々にも飛ぶ鳥の影は絶え、
どの小みちにも人の足跡は消えた。
ただ一そうの小舟、簔笠をつけた老人。
老人は一人で雪の降りしきる川面に釣り糸を垂れている。

 

18:秋風の引(しゅうふうのいん)             劉禹錫(りゅううしゃく)

 

 何処よりか秋風至る   蕭蕭として雁群を送る  

 朝来庭樹に入るを    孤客最も先んじて聞く

 

意訳

どこからか秋風が吹きそめ、
さびしげに音をたてて雁の群を送っている。
朝がた庭の木々の間をわたって枝々をざわつかせるその音を
耳ざとく、いち早く聞きつけたのは孤客の私。


 

19:隠者を尋ねて遇わず(いんじゃをたずねてあわず)     賈島(かとう)

 松下童子に問えば   言う 師は薬を採りに去ると  
 只此の山中に在らん  雲深くして処を知らず

意訳

松の木のもとで、隠者の世話をしている童子に、かの師のいらっしゃるところを尋ねた。
わが師は薬草を摘みに出かけられたとの返事。
おそらくは、この山中におられるにちがいなかろうが、
雲が深く、どこに行かれたのやら見当もつきはしない。

 
20:酒を勧む(さけをすすむ)                于武陵(うぶりょう)

 君に勧む 金屈巵   満酌辞するを須いず   
 花発けば風雨多し   人生別離足る

意訳

さあ、この金色に輝く杯、心をこめて一献さしあげよう。
なみなみと注がれた酒。これを前にして、もう十分だとことわりなさるな。
花が咲いたら嵐が来るのは、この世のならい。
ほんとうにまあ、人生というものは、別れにみちみちていることだ。


 
21:絶句(ぜっく)                     李清照(りせいしょう)

 生きては当に人傑と作るべし  死するも亦た鬼雄為らん  

 今に至りて項羽を思う      江東に過るを肯んぜざるを

意訳

人間、生きている時は、人傑といわれるような存在になるべきだし、
死んでも鬼雄(死者の中の雄者)となりたいものだ。
今日つくづく項羽を思う。
彼が江東へ渡るのを聞き入れなかったことを。


 
22:京師にて家書を得たり(けいしにてかしょをえたり)     袁凱(えんがい)

 江水三千里   家書十五行

 行行別語無く  只道う 早く郷に帰れと

意訳

江水の向こう、道は三千里のかなたから、
ついた手紙はわずかに十五行。
どの行もほかのことは言わず、
ただただ、早く郷里に帰れ、というばかり。


 
23:涼州詞(りょうしゅうし)                 王翰(おうかん)

 葡萄の美酒 夜光の杯          飲まんと欲すれば琵琶馬上に催す 

 酔うて沙場に臥すとも君笑うこと莫かれ   古来征戦幾人か回る

 

意訳

血のように真っ赤な葡萄のうま酒を、夜星の光でもひかるという美しい杯で飲む。
飲もうとすると、琵琶を馬上でだれやらジャラジャラ早いテンポでかきならしている。
したたか飲んで酔いつぶれ、そのままへべれけになって砂漠の上に倒れふしてしまった私を、諸君どうか笑わないでくれたまえ。
昔からこんな辺地に出征して、無事生還できた人がどれだけいるだろうか。

 
24:芙蓉楼にて辛漸を送る(ふようろうにてしんぜんをおくる)  王昌齢(おうしょうれい)

 寒雨江に連なって夜呉に入る  平明客を送れば楚山孤なり  

 洛陽の親友如し相問わば     一片の氷心玉壺に在りと

 

意訳

寒々とした雨が、川に雨脚を注ぐ中を、私たちは夜になって呉の地へ入って来た。
やがて別れの夜も明けるころ、旅立つ君を見送ると、夜来の雨もやんで、朝もやのはれゆく中にポツンと楚の山が見える。
君が洛陽に行けば、友達がきっとこう尋ねるだろう。王昌齢はどうしている、と。
そうしたら君、王昌齢は一片の澄みきった氷が玉壺の中にあるような心境でいる、と答えてくれたまえ。


 
25:除夜の作(じょやのさく)                  高適(こうせき)

 旅館の寒灯独り眠らず  客心何事ぞ転た凄然たる  

 故郷今夜千里を思う   霜鬢明朝又一年

 

意訳

旅館の寒々としたともしびのもと、ひとり眠られぬ夜を過ごせば、
どうしたことか、旅の思いはいよいよ寂しさを増すばかり。
今夜は大晦日、故郷では家族が、遠く旅に出ている私のことを思っていることだろう。
夜が明けると、白髪の老いの身に、また一つ年をとるのだ。


 

26:董大に別る(とうだいにわかる)                高適(こうせき)


 千里の黄雲白日し       北風雁を吹いて雪紛紛
 愁うる莫かれ 前路知己無きを  天下誰人か君を識らざらん

意訳

千里のかなたまで黄色い雲が一面にたれこめ、太陽も淡く薄れている。
雲の下を行く雁に、冷たい北風が吹きつけ、雪が千々に乱れてふりしきる。
悲しみたもうな、これからの旅先に自分を理解してくれる人がいないと。
この天下に、琴の名手の君を知らぬ者などいはしない。

 

 

27:京に入る使に逢う(けいにいるつかいにあう)          岑参(しんじん)

 故園東に望めば路漫漫    双袖竜鍾として涙乾かず   

 馬上相逢うて紙筆無し    君に憑って伝語して平安を報ぜん

 

意訳

ふるさとの方、東方を見やると、道ははるばると果てしなく遠い。
それを思うと悲しくて、両袖に涙がはらはらとこぼれ、乾くひまもない。
馬上で出会ったのだから、手紙を書くための紙と筆の用意もない。
そこであなたにことづてを頼んで、無事でいることを家族に伝えよう。

 

 

28:楓橋夜泊(ふうきょうやはく)                 張継(ちょうけい)

 月落ち烏啼いて霜天に満つ  江楓漁火愁眠に対す  

 姑蘇城外の寒山寺      夜半の鐘声客船に到る

 

意訳

月は西に落ちて闇の中に鳥の鳴く声が聞こえる。厳しい霜の気配は天いっぱいに満ち満ちてもう夜明けかと思われた。
紅葉した岸の楓、点々とともる川のいさり火が、旅の愁いの浅い眠りの目にチラチラと映る。
祈りも姑蘇の町はずれの寒山寺から、

夜半を知らせる鐘の音が、わが乗る船にまで聞こえて、ああ、まだ夜中だったか、と知られた。

 

 

29:夜受降城に上りて笛を聞く(よるじゅこうじょうにのぼりてふえをきく)
                                   李益(りえき)


 回楽峰前 沙雪に似たり      受降城外 月霜の如し
 知らず 何れの処か蘆管を吹く   一夜征人尽く郷を望む

 

意訳

回楽峰の前のあたり、砂漠の砂はまるで雪のよう。
受降城の城の外、月の光に照らされて、まるで霜が降りているよう。
どこから聞こえてくるのだろうか、悲しい蘆笛の音は。
一夜、そのしらべを聞いて、はるばる来た兵士たちは皆、故郷の空を眺めやる。

 

 

30:舟中元九の詩を読む(しゅうちゅうげんきゅうのしをよむ)  白居易(はくきょい)

 君が詩巻を把って灯前に読む    詩尽き灯残りて天未だ明けず 

 眼痛み灯を滅して猶お闇坐すれば  逆風浪を吹いて船を打つ声

 

意訳

君の詩集を手に取って、灯の前で読む。
詩を読み終えた時に、灯はわずかに消え残っていただけだが、空はまだ夜の暗さのまま。
眼に痛みを覚え、灯を消し、そのまま暗がりに座っていると、
聞こえてくるのは、逆風が波を吹きあげて、船にたたきつける音ばかり。

 

 

31:山行(さんこう)                杜牧(とぼく)

 遠く寒山に上れば石径斜なり   白雲生ずる処人家有り  
 車を停めて坐に愛す 楓林の晩  霜葉は二月の花よりも紅なり

 

意訳

遠く、もの寂しい山に登っていくと、石ころの多い小道が斜めに続いている。
そして、そのはるか上の白雲が生じるあたりに、人家が見える。
車を止めさせて、気のむくままに夕暮れの楓の林の景色を愛でながめた。
霜のために紅葉した楓の葉は、春二月ごろに咲く花よりも、なおいっそう赤いことであった。

 

 

32:夜雨北に寄す(やうきたによす)             李商隠(りしょういん)

 君は帰期を問う 未だ期有らず  巴山の夜雨秋池に漲る  
 何れか当に共に西窓の燭を剪って 却って巴山夜雨の時を話すなるべし

意訳

あなたの手紙で、わたしにいつ帰ってくるのと言ってよこしたが、まだ帰る時はやってこないのだよ。
ここ巴山のあたりには、今、夜の雨が降って、秋の池に水が満々とみなぎっている。
いっしょに西の窓べでともしびの芯を切りながら、
かえって巴山に夜の雨が降り、寂しかったことを話すのは、いったいいつのことだろうなあ。

 

 

33:元日(がんじつ)                    王安石(おうあんせき)


 爆竹声中一歳除す  春風暖を送って屠蘇に入る  

 千門万戸の日  総て新桃を把って旧符に換う

 

意訳

爆竹の音がにぎやかにして、年が明けた。
春風が暖気を送って屠蘇の中へと入りこむ心地だ。
都の家々に初日の光が射しこむ下、
古いお札に換えて、桃の画を描いた新しいお札が戸口に張り出されて新年を祝う。

 

 

34:春夜(しゅんや)                    蘇軾(そしょく)

 春宵一刻 直千金  花に清香有り 月に陰有り  

 歌管楼台 声細細  鞦韆院落 夜沈沈

 

意訳

春の夜は、ひとときが千金にあたいするほど。
花には清らかな香りがただよい、月はおぼろにかすんでいる。
たかどのの歌声や管絃の音は、先ほどまでのにぎわいも終わり、今はかぼそく聞こえるだけ。
人気のない中庭にひっそりとぶらんこがぶら下がり、夜は静かに更けていく。

 

 

35:偶成(ぐうせい)                    朱熹(しゅき)

 少年老い易く学成り難し  一寸の光陰軽んずべからず  

 未だ覚ず 池塘春草の夢  階前の梧葉已に秋声

 

意訳

若い時代はうつろいやすく、学問というものはなかなか成就しない。
それ故、ほんのちょっとした学問すらも、おろそかにしてはならないのだ。
池のほとりに春の草が萌え出した楽しい夢からいまださめきらぬうちに、
庭先の青桐の葉を落とす秋に驚くのだ。

 

 

36:天山に登る(てんざんにのぼる)          智雲法師(ちうんほうし)


 万仭削り成す 天外の山   纔かに半腹を過ぐれば人間渺たり   

 巌辺四月 紅桃発き     谷口一声 黄鳥閑なり

 

意訳

天にそびえるほど高い天山。
山の中ほどを過ぎると、もう俗世間が広くぼんやりとして見える。
山の岩のほとりには初夏なのに春に咲く桃の花が赤く開いており、
山の谷の入り口では鶯がホーホケキョとひとこえ鳴いている。

 

37:相浦八景(あいのうらはっけい)-急渓飛流(きゅうけいひりゅう)

                          石井鶴山(いしいかくざん)


 行き行きて奇石に値う   石を拾いて長流を渉る   

 驟雨の至るに逢う毎に   千雷鳴りて休まず

 

意訳

流れが急で険しい渓谷をどんどん行くと不思議な石(ナポレオン石)にであった。
石を拾って長い川の流れを渡った。
ザーッと、にわか雨がやってくるたびに、
どっと滝が落ちて風が鳴る音がやまない。

 

38:山行同志に示す(さんこうどうしにしめす)     草場佩川(くさばはいせん)


 路は羊腸に入りて石苔滑らかに  風は鞋底より雲を掃いて廻る  

 山に登るは恰も書生の業に似たり 一歩歩高くして光景開く

 

意訳

山道はくねくねと曲り、苔のついた石をふみながら苦労して登ってゆく。
風が草鞋の下から吹き、周囲の雲をはらって視界がひらけた。
山登りは学生の学業に似ているなあ。
一歩また一歩高いところに登れば、光景がひらけてゆく。

 

39:歳晩即事(さいばんそくじ)             西鼓岳(にしこがく)

 
 終歳乾乾として成る所無し  読書の堂捲いて諸生散ず  

 寒膏已に凍りて燈光滅し   臥して聴く 鼠牙のを穿つ声

 

意訳

一年中懸命に学問に努め励んだが、なにもならなかった。
今年も終わって学び屋も閉まり、学生たちも帰って行った。
外の寒さは灯の油も凍るほどで、明かりも消えてしまった。
そのような寒さの大晦日、眠っていると、鼠が窓をかじる音が聞こえる。

 

 

40:桜花(おうか)                   草場船山(くさばせんざん)


 西土の牡丹 徒に自ら誇る  知らず 東海に名葩有るを  

 徐生当日 仙を求めし処   看て祥雲と做せるは是れ此の花

 

意訳

中国の牡丹はいたずらに自分自身を誇っているが、
日本に優れた花があるのを知らないのではないか。
徐福がその頃仙人の不老不死の薬草を求めたこの場所
彼が、めでたい雲がたなびいていると見て思ったそれこそ、広大に咲き誇る桜の花であるのだ。

 

 

41:無題(むだい)                   袋久平(ふくろきゅうへい)


 世運人情月を逐うて新たなり      東方は今是れ有為の辰  

 憂うるを休めよ 日暮れて路猶お遠しと 何れの処の桜花か春に遇わざらん

 

意訳

幕府が瓦解し明治政府が誕生して、世の中は日に日に新たになっている。
日本は今こそ為すべき時である。
しかし、日暮れて路猶お遠しなどと、嘆くな。
どこの桜の花が春に遇わないだろうか。桜の花は必ず春に咲くように、その時がくるのだ。

 

42:新年遣興(しんねんけんきょう)           高取西渓(たかとりせいけい)


 今年の新は異る去年の新に    未だ掃わず 帝都災後の塵  

 緬に想う 青皇駕を回らすの日  墨陀の梅柳若為の春

 

意訳

今年の新年は、大震災のあったために、去年の新年と違うなあ。
まだ都の東京では、大震災の塵が掃われていない。
青皇(春の神様)が乗り物をめぐらしてやってくる春の日
墨田川の梅や柳はちゃんと咲いているだろうか。

 

 
43:帰郷の作(ききょうのさく)           志田林三郎(しだりんざぶろう)


母を思う心 方に切にして  知らず 故山に到る  

 山猶お意有るが如し     一笑して我が還るを迎う

 

意訳

母を思い慕う気持ちのあまり、
知らず知らずに故郷に帰ってきた。
見ると故郷の山にまるで意志があるようだ。
山までも笑って私が帰るのを迎えてくれた。

 

44:多久聖廟創建三百年恭賦(たくせいびょうそうけんさんびゃくねんきょうふ)

                        石川忠久(いしかわただひさ)

          
 神明を崇敬して万世に流る   賢君の遺訓丹邱に見る   

 霊光の堂構猶お輪奐たり    聖廟創め来って三百秋

 

意訳

孔子の精神をあがめ敬う心は、長きにわたってひろまっている。
多久茂文公が残した、敬う心を大切する教訓は、丹邱(多久)の地に見られる。
孔子を祭る霊妙な光を持つ廟堂の構えは、なお広大で立派だ。
この多久聖廟が創建されてから、三百年目の秋を迎えた。

 

 

45:佐賀県漢詩連盟設立を慶賀す(さがけんかんしれんめいせつりつをけいがす)

                        石川忠久(いしかわただひさ)

       

 壬辰七夕瑞祥呈す  大いに丹邱に会し同に盟を結ぶ  

 三百年来尚文の気  奎運を闡揚して星晶煥く

 

意訳

壬辰の年の七夕の時、めでたいしるしが現れた。
おおいに丹邱(多久)に集まっていっしょに盟を結んだ。
多久茂文公から三百年来、この地には文を尊ぶ気がみなぎっている。
文化を司る奎星の運気を明らかにし、その星の光が輝くことであろう。

 

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参考文献
・『漢詩鑑賞事典』石川忠久編(講談社学術文庫)
・『漢詩のこころ』石川忠久著(時事通信社)
・『漢詩の楽しみ』石川忠久著(時事通信社)
 
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